

え、原発や核兵器以外で被曝することなんてあり得るの?

被曝っていう表現は正しくないけど、放射線はボク達の生活において意外と身近にあったりするよ。

なんかあったっけ。

がんの治療とかに使われる放射線治療。

あー!なるほど!
がん細胞に放射線をあててがん細胞を消すってやつね。
がん細胞に放射線をあててがん細胞を消すってやつね。

それを聞いて今回の事故の原因が分かった気がするわ。
その放射線で治療する機械が壊れたとかそんなんじゃ無いの?
その放射線で治療する機械が壊れたとかそんなんじゃ無いの?

おしい!
放射線治療器が関係しているのはあってるんだけど、機械の故障とかではないんだ。
放射線治療器が関係しているのはあってるんだけど、機械の故障とかではないんだ。

んー……。
他になんかあるかな……。
他になんかあるかな……。

かなり意外で当てることは難しいと思うから、さっそくこの事故の全貌について紹介していくよ。
放置された放射線治療装置と二人の泥棒。


この事件が起こったのは1987年の9月。
ブラジルにあるゴイアニアという都市で起こった事件で通称「ゴイアニア被曝事故」と呼ばれてる。
ブラジルにあるゴイアニアという都市で起こった事件で通称「ゴイアニア被曝事故」と呼ばれてる。

このゴイアニアには放射線治療を行う民間病院があったんだけど、その病院は1985年に移転が決定。
そしてこの事故が発生するまでは、この民間病院の跡地は廃病院として放置されていたんだ。
そしてこの事故が発生するまでは、この民間病院の跡地は廃病院として放置されていたんだ。

ふんふん。

そしてその廃病院に目を付けたのが二人の泥棒。
廃病院に高価な機械や薬品が放置されていると聞きつけて盗みに入ったんだ。
廃病院に高価な機械や薬品が放置されていると聞きつけて盗みに入ったんだ。

まさか……。

そして二人の泥棒は放置されていた放射線照射装置を発見。

ただ、その機械が放射線の照射装置と知らなかった二人はスクラップ屋に売れそうなパーツを盗むために分解を開始。

うわわわわ……。

分解してまもなく二人の泥棒は照射装置から厳重に保護されているパーツを発見。

あー……。
つまりそのパーツってのが放射能物質って事?
つまりそのパーツってのが放射能物質って事?

そのとおり。
正確にはセシウム137っていう放射性同位体だね。
ちなみに、この時点ではセシウム137は厳重な遮蔽装置に守られてて盗みに入った廃病院ではこれ以上分解する事ができなかったんだ。
正確にはセシウム137っていう放射性同位体だね。
ちなみに、この時点ではセシウム137は厳重な遮蔽装置に守られてて盗みに入った廃病院ではこれ以上分解する事ができなかったんだ。

ここまできて諦めるわけ無いわよね……。

そう。
廃病院ではこれ以上分解できないと分かった泥棒達はこのセシウム137が詰まった遮蔽装置ごと家に持ち帰ったんだ。
廃病院ではこれ以上分解できないと分かった泥棒達はこのセシウム137が詰まった遮蔽装置ごと家に持ち帰ったんだ。

そして放射能汚染が広がったって訳ね……

いや、この時点では遮蔽装置があるから放射能汚染は広がってないよ。

でも、盗みに入った泥棒はこの時点から強力なガンマ線を浴び始めていたけどね……。

っていうかなんでそんな危険な物が廃病院に放置されてたのよ。

あー。それは病院の移転の時に廃病院があった地元の自治団体と放射線照射装置の所有権を巡って一悶着あってね。
移転した新しい施設へ持って行くことが出来なかったんだよ。
移転した新しい施設へ持って行くことが出来なかったんだよ。

だからって放置しとけるような物でも無いでしょうに……。
セシウム137を盗んでしまった泥棒と買い取ってしまった業者

それじゃ、二人の泥棒の話に戻るけど今からは分かりやすいように二人の泥棒を「泥棒A」と「泥棒B]とするね。

この遮断装置を盗み出したのは9月10日~13日の間なんだけど、ガンマ線にさらされ続けた泥棒Aと泥棒Bは13日の時点で嘔吐などの症状が出現。
14日には泥棒Bの腕には浮腫が出始めていたんだ。
14日には泥棒Bの腕には浮腫が出始めていたんだ。

うわぁ……。
いきなり影響がで始めてるじゃん……。
いきなり影響がで始めてるじゃん……。

ちなみに泥棒Bは15日に病院を受診するけど、そのときは食物アレルギーと判断されちゃいます。

さすがに名医でもまさかガンマ線に照射されつづけた結果だなんて分からないわよね……。

そしてこの後、遮断装置ごとセシウム137を持ち帰った泥棒達はどうしたと思う?

泥棒からしたら遮断装置は高価な物が入った箱に見えているわけよね。

うん。

そりゃぁ……空けちゃうでしょ……?

その通り。
なんと泥棒Aが9月18日に遮断装置を分解して、遮断装置の中からセシウム137が入った線源容器をとりだした。
しかも泥棒Aは線源容器を取り出しただけでなく、線源容器にドライバーで穴を空けて中身のセシウム137を取り出してしまう。
なんと泥棒Aが9月18日に遮断装置を分解して、遮断装置の中からセシウム137が入った線源容器をとりだした。
しかも泥棒Aは線源容器を取り出しただけでなく、線源容器にドライバーで穴を空けて中身のセシウム137を取り出してしまう。

セシウム137ってどんな物なの?

外見は普通の白い粉だよ。
ただ、暗闇ではうっすらと発光するけどね。
ただ、暗闇ではうっすらと発光するけどね。

セシウム137って光るんだ。

蛍光塗料みたいなかんじで光るよ。


ちなみにこの白い粉が何か分からなかった泥棒Aは価値のないものと判断。
ただ、遮断装置には大量の鉛が使われていたことから遮断装置ごと廃品回収業者にスクラップとして売りつける。
ただ、遮断装置には大量の鉛が使われていたことから遮断装置ごと廃品回収業者にスクラップとして売りつける。

この廃品回収業者を以後「業者C」として、鉛の塊のスクラップとして遮断装置を購入した業者Cはその日の夜に遮断装置が青白く光っているのを見つける。

それを見つけた業者Cはおもしろがって遮断装置を家に持ち帰ってしまう。
そして9月18日から3日間の間、家族や友人達に不思議に光る粉を見せびらかしていたんだ。
そして9月18日から3日間の間、家族や友人達に不思議に光る粉を見せびらかしていたんだ。

同じ状況ならアンタも同じ事しそうね。

うん。
たぶんしてる。
たぶんしてる。

そして、光る粉をおもしろがった業者Cや業者Cの家族たちはセシウム137を遮断装置からすべて取り出し親族に配ったり、肌に塗ったりして遊んだりしていんたんだ。

ええ……
大丈夫なの……それ……。
大丈夫なの……それ……。

当然大丈夫なわけがない。
泥棒から買い取った3日後である21日の時点で業者Cの妻は下痢と嘔吐で動けないほど衰弱。
そしてちょうどこの日、泥棒Aは皮膚がただれ始めて入院など徐々に放射線の恐ろしさが表れ始めるんだ。
泥棒から買い取った3日後である21日の時点で業者Cの妻は下痢と嘔吐で動けないほど衰弱。
そしてちょうどこの日、泥棒Aは皮膚がただれ始めて入院など徐々に放射線の恐ろしさが表れ始めるんだ。

しかもセシウム137は光るという外見から人気がでてて欲しがる人が後を絶たず小分けにされて配布されつづけた。
つまり、どんどんと汚染が広がっていったんだよ。
つまり、どんどんと汚染が広がっていったんだよ。

まるでバイオハザードね……
遅すぎた発見と振り切れた線量計

そして、ついにこの放射能汚染事件が発覚する時が来ます。

おお、やっとか……
もう何人かは取り返しが付かなくなってそうだけど……
もう何人かは取り返しが付かなくなってそうだけど……

この事態に一番最初に感づいたのは業者Cの妻。
彼女はこの光る粉が来てから周りの人々の調子が悪くなっていると気づき、セシウム137を保健当局へ届けたんだ。
彼女はこの光る粉が来てから周りの人々の調子が悪くなっていると気づき、セシウム137を保健当局へ届けたんだ。

ただ、衰弱しきっていた彼女を見た医師は治療を優先させるため熱帯病病院に向かわせる。
一方、業者Cの妻がもってきたセシウム137は保健当局事務所に放置されてしまう。
一方、業者Cの妻がもってきたセシウム137は保健当局事務所に放置されてしまう。

医師としては正しい判断なのかもしれないけど、物事が悪い方にしか転ばないわね……。

一方で熱帯病病院では原因不明の同じような症状の患者が何人もいて、一人の医師が患者のただれた皮膚をみて
「この皮膚炎は放射線皮膚炎で、一連の原因不明の症状は放射線被曝なのでは?」
と疑いはじめたんだ。
「この皮膚炎は放射線皮膚炎で、一連の原因不明の症状は放射線被曝なのでは?」
と疑いはじめたんだ。

そして、偶然たまたまゴイアニアに放射線医学専門家の医師がいて、今回の事件の相談をうけて線量計を持ってセシウム137が持ち込まれた保健当局へ調査を実施。

おっ。ようやく解決に向かいそうね。

そして専門家が保健当局の建物に到着した時に線量計が振り切れている事に気づく。

専門家は線量計の故障だと思って新しい線量計をもって来させるように連絡したんだけど、新しい線量計が建物に近づいた時点で再び針が振り切れてしまったんだ。

怖っ!

故障じゃ無いってことよね。

そう。
この時点でこの建物にには計測不可能なほどの放射線源があると判断した医師は保険当局内の人たちを非難させると同時に様々なところへ通報。
この時点でこの建物にには計測不可能なほどの放射線源があると判断した医師は保険当局内の人たちを非難させると同時に様々なところへ通報。

そして関係者から事情聴取を行って解体業者Cの解体工場や泥棒Aの自宅を調査したんだけど、この時点で既に計測不可能なほど放射能に汚染されていることが判明するんだ。
終息を迎えたゴイアニア被曝事故

以上がゴイアニアで二人の泥棒のせいで起きた大規模な被曝事故の全貌。

ちなみに約12万人の住民が隔離されて検査を実施することになったんだけど、その中で249人が汚染されていることが判明したんだ。

249人も!?

そういえば泥棒とか解体業者はどうなったの?

泥棒Aは右腕を切断、泥棒Bも右手の指を切断しなければならなかったみたいだよ。

なんか泥棒としての天罰っぽいわねぇ……。

でも、一番被害が大きかったのはセシウム137で遊んでいた業者Cの家族や親族達

セシウム137を自宅においていたため、自宅に長時間いた業者Cの妻や姪は死亡。
あとセシウムを取り出す作業を担当した業者Cの従業員2名が死亡。
結果、この事件では4人の死者を出す事件になったんだよ。
あとセシウムを取り出す作業を担当した業者Cの従業員2名が死亡。
結果、この事件では4人の死者を出す事件になったんだよ。

泥棒はともかく業者の人たちは可哀そうすぎる……。

でも業者達も更なる鉛をもとめて廃病院に泥棒しに行ったみたいだけどね。

前言撤回。
奥さんや姪が可哀そうすぎる……。
奥さんや姪が可哀そうすぎる……。

そいや放射線とか放射能の事故で怖いのは汚染でしょ?
広まったセシウム137はどうなったの。
広まったセシウム137はどうなったの。

それは大規模な汚染除去作業が行われたよ。

泥棒達の家や業者の家、セシウムをもらった親戚達の家などすべてが解体されて撤去。
当然、遮蔽装置を解体していたスクラップ場も解体撤去。
当然、遮蔽装置を解体していたスクラップ場も解体撤去。

あと汚染されていると判断された地域の表土もすべて入れ替えられたらしい。

ちなみに今回の犠牲となった4人の遺体は放射線を遮蔽するために鉛の特注品。
しかも、その周りをコンクリートで埋めるという対処がとられたらしい
しかも、その周りをコンクリートで埋めるという対処がとられたらしい

んん……。
複雑な感じだけど仕方ないのかもしれないわね……。
複雑な感じだけど仕方ないのかもしれないわね……。

本当に大きな事件だったのね。
アンタも訳の分からない物は拾っちゃだめよ?
アンタも訳の分からない物は拾っちゃだめよ?

善処します……。
それも原発や核兵器ではなく2人の一般人によって249人が被曝したという恐ろしい事故の話でっす!